甘楽町秋畑の古民家群へ
実は広恵ちゃんとは1回しか会ったことはない。その1回も、綿*を扱える人としての顔で出会っているほうが大きく、今回訪問するまで本格的に自然農法に取り組む人物とは知らなった。「髙橋さん」ではなく「広恵ちゃん」と氏名ですっと出てくるのは、なんとなくにじみ出る彼女の人柄の裏に、自然と向き合う人となりがあるのだと今は振り返る。
*マムズスタイルでは5年以上、長野綿をきっかけに毎年綿花を育てています
前橋市から約35km。石畳の城下町小幡を通り抜け、甘楽町秋畑のある山中へと入る。この頃の長雨により、土砂崩れが各所で発生。大きく山がえぐれた景色も横目に通ってゆく。アスファルトで舗装された道が段々と欠け、砂利道へと変わってゆく頃には建つ家々の景色も随分と変わり、築100年ぐらいは経過していそうな古民家群の集落に入っていく。ただそんな家々も完全な空き家ばかりではなく、洗濯物や農機具、杖で歩く高齢者をポツンポツンと見かけるので、人気があることに少し安心しながらも、ここが限界集落に向かっているであろう様子を感じ取る。
養蚕農家に住まう広恵ちゃんのお宅。2階のお蚕の軒先には野菜類を天日干しするためのかごがつり下げられている。現代住宅では見られない古民家の使い方、生活の知恵をこの家の外にも中にも見ることができる。
「このカゴってここに取り付けてそう使うのね〜!」
そう。道具があっても今の自分達には分からない。つまり使う文化が無い。それはその文化が失われていくということ。ふとした暮らしぶりに、歴史の中で育ってきた文化の失われた姿をここで大いに見るわけです。
広恵ちゃんがレモンバームをザクザク切ったハーブティーを淹れてくれた。水は山の水100%。平地では山からの水をダムで貯めて浄水センターへ。または貯水池の水が浄水場などを通って各家庭に届けられる。しかしここでは山からの水を貯めながら直結で水道へ。
「山の水が足りなくなってるぞ」
というサインを蛇口をひねった音で分かるそう。土砂崩れが発生していた時には茶色い水が流れ、もちろんその水でお風呂になるので「綺麗なんだかどうなんだか泥水に入っているみたい!」と本人も言う。
住まう山の恵みが自分の生活(命)に直結しているのだ。自分の力ではどうにもならない自然のダイナミズムに溶け込みながら、その中で生きる昔ながらの暮らしぶりはそれ以外の選択肢がないぐらいとても合理的なのだというのが分かる。
綿紡ぎの技術を教わる。
ここは説明が難しいのでコマを使った糸紡ぎの様子を一つ載せます。綿仕事は「ワタが世界を変える 衣の時給について考えよう」著者田畑建さんに学んだとのこと。
後で出てくる自然農法に取り組む仕事ぶりと同じく、綿の仕事もものすごく時間をかけている。綿を育て、それを種と綿に分け、長い時間かけて紡いで糸にする。そんな糸を、
「機織り機でバンバン織っちゃうのって勿体なくない?」
育てて糸にした時間と同じぐらいの時間をかけ、ゆっくり味わいながら布にしていきたいというのが広恵ちゃんの考え。
さて綿を加工していくにはいくつか必要な道具と工程がある。ざっくり書き出すと・・
○収穫
綿と種を手で分けるか、綿繰り機を使うか。
↓
○ワタうち
分けられた綿はまだ整っていないのでワタうちが必要です。「ハンドガーター」を使いブラッシングの要領で梳きます。もしくは竹の弓。
↓
○篠づくり
綿を丸めて固めることで、糸がつながって出てくるので切れづらく紡ぎやすくなる。
↓
○糸つむぎ
手で紡ぐ、コマを使う、チャルカを使うなど方法があります。
広恵ちゃんの自然農法のお話は②に続く。
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