4者協働のアフリカンプリントのマスク「I・マスク」がスタート
眼鏡のように身体の一部と化してきた「マスク」。着けていないと裸(?)のような感覚さえ覚えるようになってきました。現在マムズスタイルは株式会社RICCI EVERYDAY(リッチ―エブリデイ)さんのマスク縫製に取り組んでいます。これはウガンダ発のライフスタイルブランド株式会社RICCI EVERYDAY、日本の過疎化地域に暮らす女性の雇用促進を行うPICHU PICHU TOKYO、ウガンダで活動する認定NPO法人テラ・ルネッサンスの4者を通して世界がマスクでつながる「I・マスク」事業です。スタートしたばかりのこの事業の背景や気づかされたことを書き留めたいと思いました。
日本とアフリカ両国の困窮の違いとその支援
マムズスタイルは、コロナを機に寄付衣料の循環から困窮家庭への食品支援へと支援の幅を広げてきました。衣料や食品、生活用品を困窮家庭にお渡ししていくとともに、なかには広報誌作業の一部を担ってくださる方もいる。物を介した支援が支援者の一方通行になりがちななかで、互いに持ちつ持たれつの関係性が困窮家庭とできてきていました。
困窮と一口に言ってもひとりひとりが抱えている困窮は様々で、その理由は複数に絡み合っているのを感じます。夫の収入がない、妻の収入がない、夫婦間のいざこざ、介護が必要、子どもが不登校、学校の理解、職場の理解、両親親戚との関係・・。誰の身におきてもおかしくない。そんな危うさの中に皆いるのだと支援する私たちも感じています。
一方、アフリカ、ウガンダでリッチーエブリデイを創業した代表の仲本千津さんは自身のキャリアにNGOスタッフとして農業支援をしていた経歴があります。ウガンダのリッチーエブリデイ工房で働き、バックなどプロダクトを作っているのはシングルマザーや元子ども兵といった職人たち。
なぜウガンダで創業したのでしょう?
NGO派遣場所で勝手が分かるとはいえ、ウガンダにとっての仲本さんは外国人でそのうえ女性であり日本で創業するよりもさらに過酷な環境だったのを想像させます。
そのきっかけを仲本さんはこう振り返ります。
―当時子ども4人を抱えるシングルマザーと出会ったんです。母親の月収は日本円で言えば約¥1000。子どもは学校へ行かせられない。特に女の子は優先順位からも外され、母親自身も小学校に行っていない。
「自分みたいにはなって欲しくない」
と言いながら、経済的に子どもの学校を諦めてしまうのがここウガンダでは普通。
しかしこの母親は違った。なけなしのお金で豚を一頭買うんですね。豚って子どもをたくさん産む。子どもが1学期通う学費が豚1頭分。お金が必要になると豚を売ってなんとか子どもを学校に行かせるわけです。学校を諦めない。そこに子どもの未来があるから。
ウガンダの貧困・困窮は日本に比べてとてもシンプルと言います。
政府が本来提供すべきセーフティーネットや教育、医療が用意されず、雇用先が非常に少ない。仕事がないために国民全体が貧困にある。皆が平等に貧しいから昔の日本のようにお互いに助け合う姿が見られる。例えば仕事が見つかればそれが最優先されるので子どもは兄妹親類に預けて家族を養うのが当たり前にある。
くじけずに立ち上がるシングルマザーの姿は、ここウガンダの人たちと一緒に事業を興していきたいと仲本さんに決意させるものがあった。5年前に創業し、代官山直営店は2年目に成長。2か月ごとにウガンダと日本を行き来しながら、「全ては無理だけれど、自分の周りにいる人ぐらいはなんとか助けていきたい」と仲本さんは話す。
私から見る仲本さんは、海外市場を見据えてプロダクトを生み出し販売するマクロな視野を持ちながら、ミクロの個人(を支援したい女性ならではの機微)を持ち合わせている稀有な日本の女性リーダーに映っていた。
「仕事」は人間にとっていかに尊い行為か私たちは改めて気づかされる
仲本さんとの会話の中で何度も登場したのは「自己肯定感」という言葉。自分自身の価値を認める力。国は違っても、人間にとって根幹であるのを再認識させられる。
―ウガンダ人がお互いに持ちつ持たれつ助け合う精神を持っているとはいえ、他人にお願いしなければ生活できないのは人をどんどん卑屈にさせていく。それはどこの地でも同じです。仕事を持つことで、これまでなかった自分の役割が見いだせる。商品やサービスを通して誰かに「ありがとう」と感謝される。社の中で自分がなくてはならない存在なんだと実感できる。
一人一人にそうした自己肯定感を持たせてくれる「仕事」は、人間にとって必要不可欠で非常に尊い行為なんだと思う。だからこそ、雇用を生み出していくのはやりがいと価値を感じる。神様っていじわるで、いい時もあれば悪い時もある。でも自己肯定感があればまた立ち上がる力を持てる。
マムズスタイルで縫製のチームが徐々に形作られてまだ2か月。とはいえそこに関わる人たちのとても前向きな明るいエネルギーを傍で見てきました。縫い物は家庭でも日常にある風景。同じ「縫い物」でも、余暇として縫うのと仕事として縫うのは随分人に与えてくれるものが違う。
経済的・精神的に困難を感じている方に是非取り組んでもらいたいとチームを組みました。
支援を受ける方が支援をする側に立って、スパイラルな力(巡り)へと個人的にもNPO法人としても支援のあり方が変化していく様子を今後も期待しています。
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